NHKスペシャル「ドキュメント北朝鮮」

 これまで知られていなかった新事実が取り上げられているなどといった発見は特にありませんでしたが、昨今の日本社会での北朝鮮への関心の高さとは裏腹に、同国の基本的な事実経緯を正面から取り上げたドキュメンタリー番組がこれまでほぼ皆無だったことの方がむしろ不思議で、この点では非常に時宜を得た企画だったように思います.

 金日成北朝鮮の指導者に据えるのに大きな役割を果たしたソ連のメクレル氏をはじめ、平壌金日成総合大学に留学し平壌東ドイツ大使館に勤務しつつホーネッカーと金日成の会談で通訳を務めたヘルガ氏などの人物までも含めてかなりの取材をこなしたようで、放映されていない重要な取材内容も他に相当あるのではないかと思います.

 ただやはり北朝鮮の現代史を本格的にあぶりだそうとすれば、3回シリーズ、それも一回一時間程度ではあまりに短すぎる.例えば1950年代後半以降、北朝鮮金日成反対派が次々に打倒されるとともに、自由な発言領域が壊滅され、社会のありとあらゆる分野の中心に「キム・イルソン」がそびえたつようになる過程(この過程はおそろしいの一言に尽きる)などをもっと時間をかけて丁寧に検証していけば、メチャクチャ見ごたえのある番組が出来ると思います.

 あと、60年代に北朝鮮から韓国に亡命したオ・ギワン氏がインタビューに答えていたことに感慨を覚えました.オ・ギワン氏は北から南に亡命し、公的な場で発言してきた人としては最古参にあたる人です.

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