不気味な暖冬

今度の冬は本当に暖かいですね。

東京は今日もコートが邪魔になるくらいの暖かさでした。

30数年生きてきて一番暖かい冬だったと思います。

今日からさっぽろ雪まつりが始まったようですが、青森の雪まつりは雪不足で中止になったそうですね。

東北地方をはじめ全国的に記録づくしの暖かさですが、ふと何年か前に読んだ『複合大噴火』という本を思い出しました。

この本は1783年に始まった浅間山の大噴火とほぼ同時に大噴火したアイスランドのラキ山の大噴火による火山灰が世界的に大きな影響を与え、フランス革命にも大きな影響を与えたとするという異色の本ですが、かなり丹念に当時の資料を調べていて、同時期の気候の移り変わりや社会的状況がつぶさに描き出されています。

天明の浅間焼け」と言われる1783年の浅間山の大噴火が日本全土に降灰をもたらし、特に現在の青森の方では人口の三分の一が餓死したことなどは知られていますが、噴火の以前、前年からこの年にかけての冬は異常に暖かくて、東北地方でも雪が全くないような状態だったそうです。ところが、春になると気温は全く上がらずに雨につぐ雨。一転して夏は冬のような寒さに見舞われ、農産物の収穫は皆無の状態、これに浅間山噴火の降灰が重なり、数年の間、未曾有の大凶作による飢饉のなかで社会的混乱が続き、幕藩体制は大きく動揺することになります。

これがいわゆる「天明の大飢饉」です。

「複合大噴火」に記されている1782年から1783年にかけての異常なまでの冬の暖かさと、去年から今年にかけての暖冬の様子がそっくりです。

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上前淳一郎著、『複合大噴火』、文藝春秋社、1989年刊。